映画「聖の青春」 死ぬまでに一度でいいから女を抱きたかった

29歳の若さで亡くなった将棋の棋士の物語。

「聖の青春」は将棋ファンであれば誰もが知ってる物語だろうけど一般的な認知度はどうなんだろう?この映画が興行的に成功したのかも不明だ。

この映画の主人公である村山聖氏はリアルタイムでその対局姿を観たことがある。NHK杯の将棋トーナメントに出場していたが、その強烈な風体がとても印象に残っていた。太っていて髪はボサボサ。ぶっきらぼうな感じの異色の棋士。

同時期に「SPA!」で彼の特集記事があり、それも記憶に残ってる。部屋は散らかっていて、漫画本に埋もれている。その漫画とは少女漫画。そして確かリカちゃん?人形を手にもっていて頬に寄せてニッコリ笑っている写真が掲載されていた。取材で同席していた米長邦雄氏の唖然していた感じがとても印象的だった。確か少女漫画は二冊買うと書かれていた。一冊は保存用でもう一冊は読む用だとか。

自分のキャラを知っているのか何かもういろいろと開き直っているようにも見えた。

病魔と闘いながら将棋の名人を目指す青年の話。

たいていの人はこの「聖の青春」という物語の受け止め方はそうだろうけど、少し焦点がずれている。というかそれじゃピンボケだ。

病気の苦悩ではなく「不器用な男性の苦悩」に焦点を当ててほしい。

太っていて(病気のため)少女漫画が好きで非社交的。異様に部屋は散らかっている。そんなステレオタイプな男性が味わう人生の苦汁。

こんな場面がある。

「僕には夢が二つあります。一つは名人になること。もう一つは素敵な恋愛をして結婚すること。・・でもだめですこんな体じゃ。僕は長生き出来ないから」

死期を悟った彼はこう言う。

そして続けさまに「・・でも死ぬまでに一度でいいから女を抱いてみたいな」と。

このセリフが「聖の青春」という物語の焦点であると思う。

将棋のプロ棋士であり、それで大金を稼ぐような才覚のある男性ですら、社交的な性格、イケてる容姿、女性受けする趣味に恵まれないと女性にまるで相手にされない。女性は遠ざかって行ってしまう。

そんな苦悩が伝わってくる。

彼はこの二つの夢を叶えることなく病気で死んでしまう。

青春物語という性質上、あからさまに性に重点を置くことはできないように思う。しかし性的な欲求不満はかなりの苦悩だったんじゃないだろうか?本能的な快感が満たせないというだけでなく、女性に受け入れられないということは男性にとってとても辛いことだ。

それは精神を病み、体を蝕む要因になりえると俺は思う。

彼に女性がいればもしかしたら人生は大きく変わっていたかもしれない。

不器用で社交下手。競馬、麻雀(ギャンブル)が好き。大酒。ジャンクフード。不摂生。

彼のこれらの資質はとても男性的な特徴であると思う。男性は安定よりもリスクを好み、そして欲望に溺れやすい。そんな男性こそ「女性」が必要だと思うが、男性がみんな女性を気軽に誘えたり、女性を虜に出来る能力があるわけではない。

この部分にもっと映画では迫って欲しかった。「死ぬまでに一度でいいから女を抱きたかった」という象徴的なセリフや本屋の女性店員に好意を抱いているというシーンくらいしか、その手掛かりはなかった。

俳優は松山ケンイチと東出昌大。ファン層である女性を観客として取り込むためだろうと思うけど、イケメン俳優目当てで映画を見に行った女子達は一体何を思いながら見るのか?そこが気になるところだ。

女性ウケしない男性はたった一人で壮絶な人生を生き抜かなければならない。

そして命を落とすことすらある。

彼は将棋と言う才能があるからこうやって映画化されたが何もない女性ウケしない男性はひっそりと死んでいく運命にある。

そんな男性の事情がイケメン俳優好きな女子達に果たして伝わるんだろうか?